予定通り、私たち氷帝、立海、青学の合同合宿が行われることになった。
・・・あの日、本当に嫉妬だったのか、なんてことは確認していない。それに、それからは特にいつもと変わらぬ生活だった。
でも、今日からは合宿。マネージャーの私がやることも増えるけれど、それ以上に日吉と過ごす時間も増えるわけだ。・・・しかも、今回は柳先輩や乾さんもいらっしゃり、マネージャー的業務も手伝ってくださるらしい。もちろん、私が主体でやらなければならないし、そうするつもりでいるけれど!!
とにかく、この合宿でこの間のことを直接聞くことはないだろうけど、少しでも確信に近いものが得られれば・・・と思っている。だから、いっぱい日吉と話そう!
なんて、そんなにも事は上手く運ばず・・・。
まず、合宿地は榊先生の私有地をお借りできることになったため、私たち氷帝が出迎えようということになった。となれば、その準備をしなければならず、各校の皆さんがいらっしゃるまで、私たちは慌しくしていた。日吉と雑談する余裕なんて無かった。
そして、いざ立海の皆さんが着くと・・・・・・まぁ、予想通り。
「ー!!!会いたかった・・・っ!」
「あ、赤也!わ、わかったから、一旦離れて!」
「何でだよー?は俺に会いたくなかったわけ・・・?」
「そんなわけないでしょ?・・・ほら、今日から合宿でしばらくは近くに居られるんだから。」
「・・・それもそうだな!あぁ、本当俺はこの日が楽しみで・・・・・・!!」
「うん、わかったから。だから・・・離れてってば・・・!!」
という感じで、ずっと赤也に捕まり・・・。
そりゃね、私だって嬉しいよ。また立海の皆さんと、こうして部活ができるのは。それに、赤也は小さい頃から一緒だったわけだし、やっぱり赤也と居ると落ち着ける。
でも!今は私も忙しいの・・・!
さらに、青学の皆さんもいらっしゃり・・・。
「久しぶりだな、さん。今日からよろしく頼むよ。」
「乾さん!こちらこそ、お願いします。」
「ところで、日吉とは上手くいってるかい?」
「・・・な、何のことですか?!」
「何だ・・・。まだ進展は無いのか。・・・そうか、まだ少し早かったな。」
「そうだよ、乾。」
「ふ、不二さんまで!」
「やぁ、久しぶり。よろしくね。」
「あ、はい。お願いします。・・・って、そうじゃなくて!」
「ふふ・・・。まぁ、今日から合宿だからね。何かあるかもしれないよ?」
「何かって・・・?」
「テニス以上に理屈じゃないからね。・・・そうでしょ、乾。」
「たしかに、不二の言う通りだ。」
「だから、何がなんですかー?!」
などと、乾さんと不二さんにからかわれ・・・。何だか、精神的余裕を減らされた気がする・・・。
合宿の練習が始まれば、お互い本当に忙しいし、私も邪魔をしたくないから、何も話さなかった。
お昼ご飯の時間は・・・赤也に捕まり、立海の皆さんと食事をした。夕食も、同じような感じだった。
これじゃ、むしろ、いつもより、日吉と居られる時間が無い・・・・・・!!
そんなことを心の中でぼやきながら、今日の片付けと明日の簡単な準備をしておいた。あ〜ぁ、後は寝るだけか・・・と思い、自分の部屋へ戻っている途中。
「わ・・・。日吉。」
「・・・。どうした、こんな時間に・・・もしかして、まだ何か仕事があるのか?」
「あ、ううん。大丈夫。今終わったとこ。」
「今って・・・。お前、初日から無理して倒れるなよ?何かやることがあったのなら、俺でもいいから誰かに手伝わせろ。」
「いいよ!みんな練習で疲れてるんだし・・・。」
「それはお前も一緒だろう。」
「一緒じゃないって!」
「同じだ。」
・・・って、せっかく偶然会えたのに、お互いちょっと喧嘩腰になってるじゃない!!
「・・・・・・ゴメン。」
「・・・別に謝る必要はない。俺の言うことがわかれば・・・。」
「いや、日吉の意見には未だ反対だけどね。」
「何だと・・・?」
また日吉が眉間に皺を寄せて言い返してきそうだったけど、喧嘩がしたいわけじゃないから、私は笑顔で言い切ってやることにした。・・・言い切ってやる、なんて思ってる辺り、私も微妙に喧嘩腰なのかもしれないけど。でも、本当に喧嘩がしたいわけじゃないんだ。
「だって、私の仕事は私がやること。日吉たちは練習に集中していればいいの。わかる?・・・でも、今日はあんまり日吉と喋る機会が無かったのに、今いきなり険悪なムードになりかけてゴメンね、ってこと。せっかく、久しぶりに話せるのに。」
「・・・・・・・・・たしかに、同じ場所に居たはずなのに、妙に久しく思えるな。」
「でしょ?それなのに、せっかくの機会を喧嘩で終わらせたくないの。だから、ごめんなさい。」
「・・・そうだな。俺も悪かった。」
「ううん、全然!・・・とにかく、今はその話は置いとこう。」
「・・・だからと言って、何の話をするんだ?お互い、明日に備えてもう休んだ方がいいだろう?」
「・・・・・・それもそうだね・・・。あ〜ぁ、本当・・・。今日は、全然氷帝のみんなと喋ってないよ・・・寂しいな・・・。まぁ、合宿は始まったばかりだし、まだ時間はあるんだけど・・・それでも今日は残念だったなぁ〜・・・。」
「それは立海の切原と居たから、だろう?」
「うん・・・。」
「久しぶりに幼馴染と会えてよかったんじゃないか、お互い。」
・・・まただ。何となく、嫌そうな言い方。それじゃあ・・・。
「越前くんとも話せてないし・・・。」
「またチビ助のことか・・・。」
やっぱり、すごく不機嫌そう。・・・・・・これが嫉妬だったら、いいのに・・・。
でも、今はこれ以上嫌な雰囲気にはなりたくない。
「これで日吉とも話せてなかったら、今日の私は疲れを取り切れないところだったよ。だから、会えて嬉しかった!ありがとね、寝る前だって言うのに、話に付き合ってくれて。」
「・・・・・・別に。」
「それじゃ、おやすみ!」
本当に名残惜しいけれど、そう言って別れようとしたら・・・日吉が私を呼び止めた。
「。最後にいいか。」
「・・・何?」
「さっきの話に戻るが・・・明日の夜も何か準備があったら、絶対に俺に言え。いいな?」
「その話は置いとこうって言ったじゃない・・・。ダメだよ。絶対に言わない。」
「いいから言え。・・・・・・そうすれば・・・、お前と話す時間が作れる。」
「・・・・・・・・・本当にいいの?」
「当然だ。」
「・・・やったー!!」
「静かにしろ・・・!もう夜なんだぞ・・・?!」
「ご、ごめん・・・!」
「わかったなら、部屋に戻るぞ。・・・部屋の前まで送ってやるから。」
「うん・・・・・・って、いいよ。すぐそこだし・・・。」
「馬鹿。・・・少しでも長く・・・・・・お前をからかう時間が欲しいだけだ。」
「な、何よー・・・もう・・・!」
日吉はいつもと変わらずニヤリとしていたけど、内心私はドキドキだった。だって、少しでも長く・・・なんて言われたら、ちょっと期待しそうになるじゃない!それに・・・こんな時間に一緒に居ることだって珍しいし・・・。でも、おかげで明日からも楽しい合宿になりそうだ!
それと、1つわかったことがある。
日吉の態度が嫉妬なのか。それはわからない。私の願望が入り混じって、冷静な判断ができないからね。
・・・でも、やっぱり私は日吉のことが好きなんだってことは、すごく実感できた気がした。
この話のために、『12:+越前』のとき、不二さんの御名前を出していたのでした(笑)。なので、本当はもっと不二さんの出番を増やしたかったところですが・・・。やはり、日吉夢なので日吉くんを優先させていただきました(←当たり前/笑)。
さて、次が『30:12月5日』で最終話・・・・・・ではありません。そうなると、カウントダウンができませんからね(笑)。まぁ、最終話ではあるんですが、次は前編後編と別れておりまして・・・。明日に前編を、そして、当日に後編をアップする予定です。
ここまで来ると、何だか少し感慨深いものがありますが・・・(笑)、最後まで気を抜かず、力を尽くします!
('09/12/03)